大学での教育・研究の流れ

東京都立大学 地理環境学科では、1・2年生の間に地球科学や地理学に関する基礎を学びます。3年生からは研究室に仮所属し、大巡検と呼ばれるフィールドワークを研究室ごとに実施します。4年生で正式に研究室に所属し、1年間かけて卒業論文に向けた研究に取り組みます。また、地理環境学科では、教員免許や学芸員などの資格を取得することもできます。詳しくは、取得可能な資格・免許  をご覧ください。入試については、入試案内  をご覧ください。

学部1・2年
仮所属
学部4年
就職・進学

学部1・2年
基礎を学ぶ

地理環境学科では、地球科学や地理学に関する科目を幅広く学びます。具体的には、5つの研究室(地形・地質学、気候学、環境地理学、地理情報学、都市・人文地理学)に関する科目が開講され、自分に合った研究室を選ぶための材料を集めます。気候学研究室に関する科目では、様々な時間・空間スケールの気象・気候現象について学び、実習では気象観測や簡単な気象データ解析を行います。

これに加えて、教養科目を学ぶことで、研究を進める上で必要な知識を習得します。特に気候学研究室では、データ解析や文献調査において、英語・数学・統計学・物理学・プログラミングなどの科目が重要になります。

学部3年
大巡検

3年生では、「大巡検」と呼ばれる実習を行います。この実習は研究室ごとに分かれてフィールドワークを行い、最後に報告書を作成します。研究室の選択は学生に委ねられており、どの研究室の大巡検に参加するかで、4年生以降で所属する研究室がほぼ決定します。

大巡検は、4年生で卒業論文を執筆するための練習のようなものです。気候学研究室の大巡検では、夏休みに国内で3〜4泊程度の気象観測実習を行います。夏休み前には観測の準備や事前学習を行い、大巡検終了後は観測データを用いた解析を行い、報告書にまとめます。気象データを扱い、文献調査を行う中で、解析技術や論文を読む力を身につけます。

数メートルある木製の囲いを背景に、3人の学生が野外の草地の上で三脚上に固定した風向計を調整している様子。
風向計の設置(2023年度@陸別町)
黄色いビニールテープで計測機器が取り付けられた4つのプロペラを備えた白いドローンが、木立の前で飛行している様子。
ドローンを用いた大気の鉛直構造の観測(2023年度@陸別町)

学部3年
教科書・論文読み

3年生では、大巡検と並行して、論文や教科書を読む授業が行われます。まずは、気象学に関する入門的な教科書を読み、大気の力学や熱力学などに関する理論を学びます。そして、そこで得た知識をもとに、論文を読み、その内容をお互いに紹介します。最初は日本語の論文を、最終的には英語の論文を紹介することになります。

グレーの机の天板に置かれた、ハードカバーの白い表紙の教科書『総観気象学入門』(小倉義光著)。
教科書読みで使用する教科書の例
講義室で、プロジェクターで映し出された渦度方程式の導出スライドをポインターで指し示して説明している学生の様子。
教科書の内容をお互いに解説

学部4年
卒業論文に向けた研究

4年生では、所属する研究室を正式に決定し、卒業論文に向けた研究に取り組みます。研究室の「ゼミ」に参加し、自身の研究テーマや他の学生の研究テーマについて議論を行います。議論の内容を参考にしながら、自身の解析や文献調査を進めます。9月にはゼミ合宿(1泊または2泊)を行い、卒業論文の中間発表に向けた発表の練習や研究内容の改善を行います。2月に卒業論文を最終提出し、受理されることで卒業が認められ、学士(理学)が取得できます。

左側に正射図法で描かれた太平洋地域の可降水量の分布図。右側にその図を作成するためのPythonスクリプト。
ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)のAIモデルが予報した12時間後の可降水量分布(データ:ECMWF AIFS
厚手のコートを着た男性が、パイロットバルーンを追跡するための緑色のセオドライトを三脚に据えて覗き込み、気球の高度を観測している様子。
パイロットバルーンと呼ばれる気球を追跡して上空の風向と風速を観測する(2023年度@都立大)

大学院
研究をさらに深める

大学卒業後に研究を継続したい場合、試験に合格することで大学院の博士前期課程(修士課程)に進むことができます。地理環境学域には、他大学からの進学も可能です。大学院では、学部までに得た知識やスキルを活用して、研究をさらに深めていきます。「ゼミ」への参加や各スタッフや学生が主体の「サブゼミ」での議論で研究内容に磨きをかけていきます。博士前期課程2年で修士論文を提出し、受理されることで修了が認められ、修士(理学)あるいは修士(地理学)の学位を取得できます。

また、博士前期課程を修了すると、博士後期課程に進学できます。東京都立大学では、日本学術振興会特別研究員(DC1・DC2)以外にも、様々な博士後期課程の学生に向けた支援事業が行われています。博士後期課程の修了要件を満たすと、博士(理学)あるいは博士(地理学)を取得できます。

国際学会のポスターセッション会場で、黒い服の発表者が白いシャツとキャップを被って黒いリュックを背負った参加者に向けてポスターを説明している様子。
国際学会でのポスター発表(2024年度@GEWEX-OSC)
屋上の柵で囲まれた中に並ぶ雷検出システムの全景。ソーラーパネルと金属製のデータロガーボックス、その上に白い円形センサーと小型アンテナが設置されている。
防災科研との共同研究として、東京都立大学に設置されている雷観測装置。同様の装置が首都圏の複数地点に設置され、雷シグナルの検出タイミングの「ずれ」を利用して雷の位置を推定する。